続・亡霊(ファントム)たちの宴02
だから男たちは大和なんだって!
携帯電話という不幸なアイテムも時には役に立つもんだと、携帯電話を持ってキョロキョロ見回しているDIさんを発見したときにはそう思った。全く現金なものだ。
「この前はお世話になりました」
といってDIさんの顔が子供のように弾けると、なんだかんだで400キロちかく、4時間の道程が報われたような気がして、僕もホクホクと踊りだしてしまう。僕の血圧を上げた罰としてずっと運転手をさせてきたKHも、さっきまでモズに捕まって電柱の先っちょに突き刺さっていたカエルみたいな顔(どんな顔だ?)をしていたのに、なんだかすっかりニコニコしちまっている。DIさんと一緒に来てくれたのは、元C1乗りで今は防府基地の教官をされているAさん。DIさんが教官時代の教え子だったそうな。見ただけで誠実さが滲み出しているようなAさんなんだけど、ひとたび教官に戻れば鬼になるんだろうなぁ。
実はこの大和ミュージアム、僕は2回目でKHは何と3回目だ。時間の都合で、前回どうしてもゆっくり出来なかった所を、今回のんびり見て回ろうかと思って出掛けたわけだが、中に入って一寸その思惑が外れてしまった。というのも、ボランティアの人が館内のバスガイドさんのような役目を受け持っていて、20~30人くらいを連れて何箇所かで説明している。それはそれで意味のあることなんだろうけど、集団が固まって立ち止まったり、一斉に動き出したりしてかなり鬱陶しい。ゆっくり見て回ろうと思っていても、先で集団が立ち止まっていれば、その部分の展示物は全く見られないし、一旦先回りして集団が動いてから戻って見直そうとしても、ゆっくり見ているうちにまた新手の集団に取り囲まれてしまう。結局僕は、ストレスで血圧が38くらい上昇した辺りで諦めて、次の零戦なんかが展示しているコーナーに移動した。前回はそんなこと無かったのに、夏休みだったから特別にこんなことをしているんだろうか?う~ん大きなお世話っていうか、せめて集団と集団の間隔を20分くらい取るようにしてくれないかなあ。
ちくと嫌なこともあったけど、でもまあいいや。何たって大和が見られたんだから。
何て言うんだろうか、やっぱり男の子は大和を見てるだけでワクワクしてしまう不思議な生き物なんだ。ウチのかみさんにこの事を何十時間説明したとしても、絶対に理解してくれないだろうし、僕が最近出掛けている航空祭なんていうものにも、とんと興味を示さない。それはまあそれで、特に好きになって欲しいとか思ったりもしないけど、僕たちを惹きつける大和って何だ?と少しだけ考えてみる。結論なんて出やしないのだけども、確実に言えるのは、戦う道具だということだ。もしこれが、豪華客船の模型だったら絶対に来ない。わざわざ4時間もかけて行かない。たまたま近くを通りかかったとしても、入場料を払ってまで入らない。じゃあ僕は、戦争をしたくてしたくてたまらない人間なのか?自分ではそうじゃあないと思っている。でも戦う道具に惹かれてしまう。
午前中は大和ミュージアムで過ごし、腹が減ったので近くのビルに入ると、どこも大入り。一番待っている人が少なかったステーキ屋さんに入った。
「わし、今日運転しなくて良いから、あの~ビール飲んでいいスかね」
DIさんが控えめに、こう言った。勿論ダメだって言う理由もないから、即時にOKを出すと途端に、鎖から解き放たれた犬コロのような目になって、
「いや~、こんな時じゃなかったら、絶対に昼間っからビール飲むなんて考えられないスね。昼間っからビールを飲むんが夢だったんですよ。」
と、子供のようにはしゃぎながら、早速喉をゴキュゴキュ鳴らして気持ちよさそうにビールを流し込んでいる。横でAさんが少し羨ましそうな顔になっていた、と感じたのは僕だけだっただろうか?
ニンニクたっぷりのサイコロステーキを食ってから直ぐ横の鉄のクジラ館を見て回る。DIさんやAさんからプチ情報を教えてもらいながら歩くと、一言一言に現役の重みを感じてしまう。
「いやあ、海自さんってこういう展示物やるの得意なんですよね」
潜水艦のアンカーってこんな場所に付いているんだと、感心しながらDIさんが笑った。
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