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続・亡霊(ファントム)たちの宴18

守る側の熱意と、守られる側の無関心

 興奮醒めやらぬ3人が、続いて連れて行ってもらったのは隊員食堂。あらかじめお願いして申し込んでいたものだ。この日のメニューは、メインが「うどん」か「ソバ」で、どちらかを選択できる。ドデカイお揚げさんが、二つ折りにされて上に覆い被さっている。これにご飯と、他には手羽を炊いたもの(1人3個まで)やサラダなどが付いて、なかなかのボリューム。
「ステーキとかの日じゃなくてすいません」
 なんて申し訳なさそうに言われたけど、いえいえとんでもない、もう十分に満足まんぞく。

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 食後の午後一番には、DIさんの引率で防府南基地へと連れて行ってもらった。ひっちさんからの情報で「お土産を買うには、北基地の売店よりも南基地の売店の方が種類が多い」というので来たわけだ。このためだけに飛行服から制服へと、DIさんをわざわざ着替えさせてしまったのと、南基地に着いた時間が、ちょうど売店が今からお昼休みに入ろうと店を閉めようとしていたところだったわけで、これをDIさんが無理を言ってくれて、ぼくらのためにまた開けてもらったりなんかして、非常に申し訳なく思った。ぼくらは無事お土産を手に入れてニコニコしたのだけれど、このように他の人に負担をかけるようなことは次からは気を付けないといけない。1度くらいなら無理は利いても、何度も続くとしんどくなるし、せっかくの良い関係が壊れたりしたら悲しいからね。

 充実した基地見学も最終コーナーを回り、ぼくらはまた第2教育隊のソファに座っていた。このころになると次第に図々しくなってきて、深々と腰掛けたりなんかしちゃうようになっちまってて、順応力が高いのか、ただ厚かましいだけなのかの判断は第3者に任せるとしても、物事には始まりがあれば必ず終りがあるんだし、ぼくの頭の中には帰り道の段取りなんかがよぎるようになっていた。ちょうどそこへ通りかかったのが第二飛行教育隊長のK林さん。そしてぼくらはK林さんの熱い魂にふれることとなった。

 先に断っておくけど、今からここに書くことは決してK林さん(他の人たちも含めて)の考えでは無いっていうことは判っておいてほしい。世間一般の話として色んな考え方や気持ちは聞いたんだけど、そんな話を聞かせてもらった上で、ぼくが思ったこと・考えたことなんで、誰かのストレートな話では一切無い。まあ、有り体に言えば、K林さんに、話してもいないことで迷惑をかけるわけにもいかないから、先に断ったっていうだけのことなんだけど、最近っていうのは、大声を出す奴とか、きれい事を振り回す輩ばかりが大手を振って闊歩する時代だから、何かにつけて面倒くさいってわけだ。
 前置きが長くなったけど、日本には国際社会の一員としての再軍備をどうするかという話合いが、もはや避けてとおれない問題となってしまっているのだと実感した。いきなり結論だと、唐突すぎて「こいつ馬鹿じゃねえの」なんて思われたかもしれないけれど、まあ順番に説明していくからもう少し待ってね。
 判りやすく言えば、今の日米安保っていうのは、会社を守るのに警備員を雇っているようなものだってこと。とりあえずアメリカっていう警備保障会社にお金を払って守ってもらっている(ここまで単純な問題じゃないっていう議論は、とりあえず置いとくとして)んだけれど、実際問題としてこの警備保障っていうシステムが機能するためには、それを上回る別のシステムが有って初めて成立するんだよね。
 つまり、〇〇警備保障っていう会社に警備を頼むとした場合、彼らが具体的にどこまで行動できるか(あてに出来るか)ということを考えると、一般社会で言えば、左翼思想を持った方達の言うところの「国家の暴力装置」である警察っていう強大な権力を持ったシステムの存在を抜きにして、警備保障会社は意味を為さなくなる。警察っていうのは、全般的な治安保障っていう意味はあるけれど、個々にまではとても365日行き渡っていないから、それを補うっていう意味(個別に守って欲しいっていう意味)で警備保障が成立するわけだ。つまり、警察の存在無くして警備保障会社は存在しないってことになる。
 この話が総て(=として)自衛隊にも当てはまるとまでは言わないけれど、ちゃんとした法的根拠に基づいた自衛隊であり、その上で在日米軍っていうことを考えないといけないわけなんだけれど、警察に与えられた実行力(法的根拠)に匹敵するものが備わっていなくてはならないのに、その辺りがあやふやなまま今度もまた海外へ(ソマリアの海賊の話だ)出そうとしている。政治家は何を考えているのか?こんなことも気付いていないのか?
 決して気付いてないって事は有り得ない。…となれば、自ずと答えは見えてくる。
「既成事実を作ってしまってから議論すればいい」
 これはぼくの勝手な妄想だけど、そんなにピント外れじゃあないはずだ。
 海外派遣にあたって法律を整備するよりも、現実問題として起こってしまった事実について議論した方が遙かに簡単だからだ。予想される問題について、~たら~ればの話を積み上げていくよりも、実際に自衛官を危険な目に遭わせてから(もっと言うなら、政治家とすれば何人か犠牲になることがあっても仕方ない、できるだけ派手にドンパチやってもらえれば、後は何人かに引責辞任させるっていうことで話が前に進む)にしようという魂胆がミエミエで、本当に政治家っていうのは汚いって思う。

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続・亡霊(ファントム)たちの宴17

防府北基地大体験 参 (T-7アクロ再現)

 フライトシミュレータって言われても、実物を見てみるまでぼくの頭の中は、どうしても巨大なゲーセンの域を出ていなかった。DIさんに案内されて連れて行かれた建物の中には、中途半端な区切られかたをした部屋が2つあって、その片方の部屋の扉を開ける。扉の中は更に暗幕で閉ざされており、両手でくぐり抜けた先にそれはあった。鉄の階段を上がるとT-7のコクピット。5台のプロジェクターで映し出された風景は180度以上で、本当に滑走路にいるみたいだ(訓練で使うのだから、当たり前なんだけれど)コクピットから身を乗り出して下の方を見てみると、ちゃんと翼だって映し出されていて、すんごいリアルさ。
「それじゃあ、ゆっくりと離陸してみて下さい」
 DIさんは事も無げに言ったけど、自慢じゃあないが、こちとら生まれてこのかた一度だって操縦なんてしたことが無いやい。ええい、ままよ。スロットルを開けて滑り出す機体。速度が増してきて「はい、ゆっくりと操縦桿を引いて」なんて言われたからグッと引いてみると、忽ち赤いランプが点灯して映像がストップした。どうも強く引きすぎたようだけど、幸い学生じゃないから、DIさんのカミナリは聞かなくて済んだ。
「スロットルの調整も私がしますんで、操縦桿だけゆっくりと引いて離陸しましょうか」
 なんて、もう涙が出るくらいに優しくて、聞いた学生から羨ましがられるかも。
 2度目は慎重に操縦桿を引いて、何とか無事に離陸を果たす。ゆっくりと右旋回、左旋回。景色がぐるぐると回って、いや~本当に楽しい。もしこれを、ちっちゃい頃に体験していたとしたら、絶対に「パイロットになる!!」って宣言しただろうな。
「じゃあ、この前私がやったやつ、やってみましょうか」
 おもむろにDIさんがこう言った。あのネットでも有名になった、新田原から帰投するT-7のローパスを、パイロットの視点から体験できるわけだ。Gこそかからないけど、こんな幸せなことはない。しかも、あのローパスをした本人が後ろで操縦桿を握って、あれをやるって言っているのだから、正真正銘の本物だ。ぼくは密かに驚喜し、これから起きることを一瞬たりとも見逃すまいと、腹に力を入れて身構えた。
          *          *          *
 機体をゆっくり旋回させながら降下していくと、不思議なことにばっちり滑走路前へ出る。DIさんは、そのまま機体を滑走路すれすれの高度に合わせると、そこから加速して、そして右へ急旋回。計器の赤いランプが点灯し、ヘッドフォンの中に警告音がこだました。グルッと270度旋回しながら機体を立て直して、再度滑走路に向け突っ込んだら、たちまち急上昇し、そのあと捻りを入れられて空と地上がぐるりと回ると、ぼくの三半規管はふにゃふにゃになってしまった。乗り物にはかなり強いつもり(車の助手席で、地図と睨めっこしたりするのは平気なもんで)でいたんだけれど、まったく何がどうしたっていうくらいで、このあと更に2~3回転プラスされてたら完全に「参った」してたかもしれない。


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「う~ん、少し気持ち悪い」
 と素直な気持ちをマイクに漏らすと、ヘッドフォンにDIさんの高笑いが響いて
「どうしても感覚が違いますから、私もこれ(シミュレータ)だと気持ち悪くなりますよ」
なんて慰めてもらった。でもまあ、滅多にない機会なんだからと、自分の三半規管に気合いを入れて、この後の縦ロール(少しぶれちゃったけど)を体験し、何とかその後の着陸へとこぎ着けた。全部で15分少々だったかな、本当に貴重な体験をすることが出来た。
 ところで飛行機を停止させるのに、左右のフットバーを同時に思いっきり踏んづけるんだって知ってた?この時どちらかが弱かったりすると、飛行機が右に行ったり左に行ったりで、グニュグニュして上手く止まってくれない。かなり強く長い時間(のような気がするだけ?)踏ん張ってたから、それまでにたっぷりと緊張しっ放しだったふくらはぎが、もう少しで痙るところだった。いや~、それにしても楽しかった。「もう一回行きますか?」なんて声をかけられたら、即座にOKしてたはず。
 あとの2人も続いて体験する。「もしかしたら、パイロットに成れるかもしれん」シミュレータを終えた後でひっちさんなどは、もうすっかりその気になっていた。

 ぼくらの隣にあった部屋の中にも、これと全く同じものが設置されていて、そこでは学生さんが訓練に励んでいた。飛び入りで見学させてもらうことになり、若鷲の元気な飛ばしっぷりを見させてもらったのだが、入室して間もなくDIさんがイタズラを仕掛ける。シミュレータの後席には、色んな設定の変更などが行えるパネルが設置されていて、これを何やらつつき始めたのだ。もちろんぼくらには、何を仕掛けているんだか全く判らない。一緒にいたメーカーの人に説明を受けて初めて、DIさんの悪魔っぷりを理解する。最初は小さなトラブルを起こし、気付かなかったので次にエンジンから火災を発生させた。ここで学生さんも気付いたのだけれど、日頃の訓練の賜物で見事適切に対処して切り抜ける。DIさんから褒められてほころんだ口元に、誇らしげに成長した若鷲の未来の姿が見えた。

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続・亡霊(ファントム)たちの宴16

防府北基地大体験 弐

 教官室に通され、ソファーにどうぞっって言われるけれど、勝手が分からないから座ってもしばらくはお尻の下がむず痒い。少し休憩してから連れて行ってもらった先は、訓練指揮所(みたいな名称だったと思うけど?あまり自信はない)で、ここで色々と説明を受ける。
「今やっているのは、いわゆるタッチ・アンド・ゴーの訓練です」
 なんて説明を受けて、しばらく見学する。4機のT-7が、順繰りに訓練を続けている。ジェットに比べると速度もゆっくりだし、音も静かだから、見た目はなんだかのんびりと見える。ふわ~っと降りてきて滑走路に着地、一旦緩まった速度を加速させてまた大空へと舞い上がっていく。天気の良さも加わって、ものすごく気持ちよさそうだ。そして、また次のT-7が降りてくる。ぐるぐるぐるぐる繰り返し。どこかで見たことのある風景だと考えていて気が付いた。自動車学校の教習所を眺めているような雰囲気なんだ。自分が初めて教習所でハンドルを握った時のことを思い出しながら、彼らのことをもう一度見てみる。今度は一転、彼らの大変さが伝わってきた。後ろには恐い恐い教官が座っているし、ぼくらには聞こえないけれど、きっとあれやこれやと矢継ぎ早に注意や質問が飛んできて、操縦はしなくちゃいけないし、質問には答えなくっちゃあいけないしで、続けてパニックを起こしちゃえば「適正無し」なんて言われたりもするのだろうから、これはこれで相当に大変な戦場なんだろうなあ。教官から
「アイ・ハブ(怒)」
なんて言われた日には、おしっこちびっちゃうよね。
 でも、見た目はあくまでものんびりと、如月の風の中をふわりふんわり飛んでいる。

 格納庫や建物の屋上なんかにも連れて行ってもらい、また違う角度から訓練を見せてもらう。格納庫近くでは、次に訓練に入る学生達が行っている飛行前点検の様子をしばし見学。
「彼らはもう、かなり慣れてきてるので、点検も30分くらいで済んじゃうんですけどね、一番最初はそりゃあもう、点検ヶ所を覚えるだけでハゲが出来ちゃいそうになるくらい大変で、時間もかかるし…」
 そう言われてみれば、どことなく手慣れたように感じられる。まあ、余裕かましていたら、その雰囲気を察知した教官に、こっぴどくやっつけられちゃうんだろうけど。
 屋上へはA楽さんの案内で向かう。そう言えば、A楽さんの飛行服姿って初めて見るけど、うーん私服よりもピタッと違和感なく見えるのが、さすがだなって思う。屋上には、基地周辺の地図が描かれていて(Mさんとかの力作らしい)、飛行学生はここでぶつぶつと独り言をいいながら地形を覚え、飛行手順なんかの復習をするのだそうだ。そうだよね、車なら道路があるから、少々道を知らなくてもそんなに迷うこともないけれど、空の上だと地上の目標物と計器だけが頼りだから、一度間違っちゃうととんでもない所に向かって行くことになるよね。間違ったとしても、そこに飛行場が有ればなんとかなるかもしれないけど、飛行場ってそんなに都合よくそこかしこに作られてないから、大概の場合生命に関わってくる。だから教官達は、学生をとことん絞り抜くんだろう。妙に物分かり良くして優しくするのは簡単だけど、難しい局面に遭遇したとしても、慌てず適切に対処のできる人間に育て上げるためには、心を鬼にして、むしろ本当の鬼として彼らの前に立ちはだかる必要があるんだろう。
 ブリーフィングの様子も見せてもらった。井Uさんが、学生に質問を浴びせかけている。
「飛行機は、どうなったら落ちるんだ?」
「…燃料が尽きると落ちます…」
 これだけ書くと馬鹿みたいな会話だけれど、ここに至るまでに井Uさんが学生に仕掛けた、ありとあらゆるトラップを含んだ会話があったわけだ。学生は教官からの質問を精一杯の力でかわそうとする。でも教官はそんな回答は端から判りきっていて、すぐさま弐の矢を放つ。こんなことを繰り返していくうちに、学生の脳みそはぐらぐらと脳震盪を起こしそうになって、論理立てた話が出来なくなっていく。そこを更に教官が攻め込む。本当に鬼のような話だけども、ここまでしないと、いざという時に空の上では生き残れないんだろうな。ついこの前も、ハドソン川に不時着して全員の命を守ったっていうパイロットの話があったじゃないか。もっとも、逆噴射~!!とか喚いて、旅客機を墜落させちゃった人も居たけどね(話が古すぎるか)

 そして、ついに遂についに~、今回のメーンイベントであるT-7のフライトシミュレータ体験の時間を迎えた。

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続・亡霊(ファントム)たちの宴15

防府北基地大体験 序

 一体どんだけ飲んだのかよく覚えてないけども、喉が渇いて目を覚ますとホテルのテレビが点いたままだった。ベッドの上で酷い恰好をして寝ている自分に気が付いた。時間は午前3時。確か正門前に9時の約束だったから、7時半ころに起きて8時くらいに出発して、朝飯食ったら丁度かな。とりあえず水を飲むことにする。寝られない、寝られない、もう寝られない。困ったどうしよう、こんなことじゃあ今日の午後にはへたばっちまうぞ。…って思ってたら、6時くらいになって突然寝ることが出来た。
 そしてぼくの感覚的には、次の瞬間にもう目覚ましが鳴る。
 しばらくぼんやりして、そして気付いて大慌てでシャワーを浴びる。よし、結構目が覚めてきたぞ。用意をしてたら予定より5分も早く呼びに来られる。まったく、あんまり早起きだと、年寄りって言われちゃうよ。
 知らない町の知らない道路を走っていると、色んな事に気付かされる。屋根の瓦がピカピカしてたり、ガードレールが黄色だったり…防府の町中で思ったのは
「やたら道路幅広くないですか?」
「うん、言われてみたら広いにゃあ、明らかに高速の道幅より広いでねえ」
っていうことだった。優に片側4メートルくらいは有りそうだった。何でこんなに広いんだろう?不思議。
 西都でも入ったファミレスを見つけたので、ここに入り朝飯にありつく。得意の玉子かけご飯で人心地つけると、ドリンクバーで梅昆布茶を見つけて「あー、酒呑んだ朝はやっぱり昆布茶やねえ」とジジイに成り下がる。基地はもうすぐだ。

 正門の前で一旦止まって、中のDIさんに連絡をとっていると、警備の女性自衛官に不審そうに見られてしまった。緑の制服だから陸上の人だ。これがアメちゃんだと、とっくに銃口をこっちに向けられてるんだろう、多分きっと絶対。
「受付には話とおしてますから、駐車場に入って声かけといて下さい。そっちへ迎えにいきますんで」
 言われたとおり受付に居た人に話してみると、見事に話がとおっていた。DIさんが古畑任三郎ばりに、自転車をぎったんばったん漕いで迎えに来てくれるまで、しばし警備の女の子と変な顔でにらめっこ、笑ったら負けよアップップ。きっと頭の悪い奴だと思われたんだろうけど、向こうが先に視線を逸らしたから、先ずぼくの1勝。
「それじゃあ、私に付いてきて下さい」
 こういうDIさんに付いていこうとすると、さっきの警備の女の子がもの凄く不安そうな顔でDIさんを見ている。その顔には
(こんな馬鹿、基地に入れて大丈夫なんですか)
って書いていた。まあ、半分当たってるけどね。ただ悪いことはしないから安心してね。 …なんてことを考えながらDIさんの後ろに続く。基地内のあちらこちらが珍しくて、キョロキョロしながら走っていると、前を走るDIさんに突っかけそうになって、なんてことはない早速騒ぎを起こしそうになって苦笑い。これでDIさん跳ねちゃったらシャレにならないからしっかり前を見る。でも集中しようとすると、他の2人が歓声を上げてぼくの気を散らす。やい、これでもしDIさんの身に何かあったとしたら、2人の責任だからな(笑)って責任回避をしながらも、教育隊へ何とか辿り着くことが出来て、DIさんは密かに命拾いをし、ぼくは犯罪者と呼ばれなくてすむ。
 着いた所の正式名称は、航空自衛隊防府北基地 第12飛行教育団 第2飛行教育隊っていう場所。ところで、自衛隊関係の言葉って文章にしようとした時、とんでもない誤変換の嵐になったりすることがあって、よくよく確認しとかないと、気付かないままアップしたりすると、笑えない漢字になってることがある。今も「ひこうきょういくたい」って入れて変換すると「非行教育隊」ってビックリするような誤変換をしてる。これじゃあまるで、少年鑑別所みたいじゃないか。先に「ひこうきょういくだん」って入れた時には、ちゃんと「飛行教育団」って出たくせに、有名某社の〇TOKって妙にユーザーを気遣ってくれる機能があるから、時々逆にそれが気疲れの種になったりすることがあるよね。同じ様な単語なのに、何で違った変換になったのか原因不明、何でだろう。

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続・亡霊(ファントム)たちの宴14

曇り時々晴れ、風強し(防府の鬼さまとの宴)

 天気予報が「雨は前日までで、出発の日には回復するよ」って言ってくれていたので、あまり心配はしてなかったのだけども、それでも朝に天気を確認して降ってないのを見て安心した。ひっちさんが急かすものだから、出発時間が1時間近くも早くなってしまった。気持ちは分かるけど、今日はもう観光するわけでもないし、ホテルにチェックインしたら夜(勿論、飲み会)に向けて休憩するだけなので、あまり早く着いても困るんだけど…
 そんなこんなで、横風と闘いながら後は高速道路をひた走る。休日の昼間割引で半額で済むとは言っても、100キロごとにインターを出入りするのは結構面倒くさい。早く「何処まで乗っても高速料金1000円」にしてくれないだろうか。
 早く着いても困るんで、途中休憩を増やしてサービスエリアに寄ってみると、何だか2割引っていう旗がヒラヒラ揺れている。へーえ知らなかった、月の第1日曜日には、こんなサービスしてる所もあるんだね。ちくと(ちょっと)お得な気分。

 高知を出てから約5時間、ほぼ当初の予定通りにホテルへ着いて、DIさんに連絡を入れる。ひとっ風呂浴びてベッドでウトウトして、そして午後5時半にホテルまで迎えに来てもらい、DIさんの官舎へ車を駐めた後は、歩いて防府北基地近くの飲み屋さんへ。一見普通の民家にしか見えないその店は、隊員様御用達のお店だそうで、お馴染みさんだけに当然サービスも満点らしい。
「ここが若鷲達が巣立つまでの揺り籠か」なんてキョロキョロしながら席に着く。ぼくの右隣はTIさん。左にひっちさんが居て、その左に初顔合わせとなるMさん。向かいに回ってA楽さん、DIさんときて、うちのN川さんが居る。ぼくの向かいは年末に高知へ来ていた井Uさん。そしてその左側が特別参加(決して本人の希望ではないのだろうけど)のF澤jr。うちの会社のF澤さんのご子息だそうな。勿論初顔合わせ。

 ビールで乾杯した後、美味い日本酒があるからと「冷や」でぐいぐい始まった。しかも容れ物がでかいの何のって、どうかすると5勺くらい入っているグラスが飛び交い始めた。今日で飲み会が4日連続していると、珍しくメールで弱音をはいていたDIさんは、さすがに今日はマイペースで乗り切ろうという腹づもりか
「いや~、ワシもう少しこれ(ビール)でいいですわ」
と様子見の体勢。
「これ、開けちゃって良いですか?」
 そんなDIさんの様子を見ていたわけでもないのだろうけども、TIさんがこう言ってぼくらがお土産(退官記念も含めて)に渡していた紙包みを手に取った。
 中身は勿論「べろべろの神様セット」(本当は「べく杯セット」っていうんだけども)で、天狗・ひょっとこ・おかめの杯と、どれで飲むかを決めるコマが入っている。コマを回して軸の向いた方に居る人が、その時に書かれていた杯で酒を飲むという趣向。一番小さいのは「おかめ杯」で、これは酒を注がれても一旦机に置くことができる。次は「ひょっとこ杯」で、ひょっとこの口の先に穴が空いていて、そこを指で塞いでいないと酒が漏れてしまうし、また大きさがおかめの1.5倍以上はあって、中々飲み応えがある。最後の「天狗杯」ときたら、ひょっとこの更に倍くらい入るし、まあ天狗っていうくらいだから、鼻がにゅーって突き出してるから飲み干すまでず~ぅっと手で持っていなくちゃいけないっていう、まさに酒呑みの酒呑みによる酒呑みのためだけのアイテムと言える。
 外包みを開けてガサガサと中を見始める。紙に包まれた杯が姿を現し、それを横目で見ていたDIさんが思い切りイヤ~な顔をして
「どうしてそれを開けちゃうんだろうな~」
って言う。でも、もう遅い。そんな言葉は一切聞こえないかのようにTIさんは立ち上がると、杯を持って一旦姿を消して、そして少ししてから「洗ってもらってきた!!」と嬉々として杯をひとつひとつテーブルの上に並べていった。さすがにこれが始まると、冷や酒は危険が危ないことを痛いほど知っている土佐っぽは、酒を燗酒に変更してもらい、無制限1本勝負、さあ、宴のゴングが鳴った。
 このお土産を、TIさんがここまで喜んでくれるとは思っていなかったので、何だかぼくまですごく嬉しかった。もうすぐ退官だっていうのに、子供のように目を輝かせながら
「本っ当に有り難うございます。いやぁ、こんな楽しい物もらっちゃって」
なんてまたコマを回している。DIさんも徐々にペースが上がってきて、美味そうに杯を飲み干していく。釣り好きのMさんは、大物釣りの本領発揮で天狗杯の大当たり。しかし、磯焼け?の黒い顔がチョットだけ赤くなったかなっていうくらいで、本当に強い強い、前世は土佐の男だったのかも知れない。井Uさんは「日本酒は苦手で、ビールが好きなんです」なんて言っちゃってたけど、べろべろの神様の前でそんな嘘は通用しない。井Uさんがコマを回しても回しても、ちゃんと軸は井Uさんの方を向く。な~んだ「日本酒苦手」って、本当は「饅頭恐い」なんだ。
 失敗したのは、今回もA楽さんとゆっくり話せなかったこと。もっとゆっくり、差しで飲みたかったので、次こそはヨロシク!!そしてC-1時代のこぼれ話など、いくつか忘れずに聞かせてもらうぞ!オーッ!!

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続・亡霊(ファントム)たちの宴13

防府へと続く道

 今年も無事に新田原基地航空祭は終了し、先に書いたDIさんのど派手なT-7によるローパスに満足してぼくらは帰途に就いた。そしてまだ基地から出て間もない16:29、DIさんから早くもメールがきた。
『長い道中お気を付けて。帰りのローパスは、あれがT-7の限界です(笑)あと、帰投中姫島北海上にて、〇〇〇〇〇を〇〇〇〇しました(原文には伏字ありませんが…)』
 けっこう、この伏字の部分が面白いのだけど、ここもまあ、大人の事情ってやつで、勝手に妄想を膨らませてみてもらうしかないわけだ。
「いいよな、飛行機は速くて」
 なんてボヤキながら、こっちは渋滞の中ごそごそ進んでいる。早く大分向けに高速道路が抜けてくれないかな、なんてあと何年かかる話だか。

「新田原が済んだら、そのまま九州を北上して防府を襲撃しようか」
 防府の鬼御一行様がご来高中に一度は冗談で盛り上がったが、まあ当然と言えば当然の話、そんなに景気よく皆にポンポン休みをくれる上司はおらず、また皆が抱えている仕事の方もそんなわがままを許してはくれないわけだ。まあ、この渋滞だから、現実問題として、このままの勢いで防府に向かっても、到着は一体何時になるんだってわけなんだけれども、でもこのメールで、「近々防府に出動するぞ」という気持ちが再燃してきた。
 それにしても今年の渋滞は、例年に増して酷いような気がした。来年以降の反省点として、もっと融通の利くエスケープルートを考えておこう。やっと臼杵に辿り着き、20:40のフェリーに間に合ったが、乗った隣のフロアが同じ航空祭帰りの組。興奮しているのか、酒も入ってガヤガヤとやかましい。いい年こいたオッチャンなんだから、もっと周りにも気を配ろうよ(怒)

 高知に戻ってからは、しばらく良い子で働いていたけれど、何か忘れているような気がしていた。何だろうって考えていたら、ポンと出てきた。
「ああそうだ、防府の誰かが年末に家族旅行で高知に来るって言ってた」
 誰だっけなと考えて、井UさんかHSさんかのどっちかまでは絞れたけれど、酔っ払っていたのでこれ以上は自信がない。N川さんやひっちさんにも訊いてみたけれど「ああ、そうそう。あの時来るって言いよった言いよった。う~ん、けんどどっちの人やったろうのう」との答え。そこで仕方ないから、失礼ながらDIさんに訊いてみた。
『年末、高知旅行を計画しているのは井Uです』
 期間は12月25~26日。でも家族旅行で子供さんも一緒って言ってたなあなんて、少しずつ思い出しながら、ぼくのアドレスを教えてもらってメールでやりとりする。
 そこで聞いた旅程は、残念ながら四万十市の方で1泊するだけで、高知市は少し観光するだけとのこと。まあ、仕方ないか。次回ゆっくり来てもらうこととして、待ち合わせ場所で少し話しただけで、お土産を貰って別れた。やはり一度TIさんが退職される前に防府出動を真面目に考えなくっちゃな。

 …という長い長い前振りで、やっと今回の『防府基地出動計画』の開始となる。
 TIさんが、2月半ばには退職準備に入り、防府を離れられるということをDIさんに教えてもらったので、それまでに何とか約束を果たさなければならないと、調整を始めたのが1月の半ばころ。人数を確定して、宿の手配のことも考えると、どうしても早くて1月の月末辺りか、2月の頭くらいになる。この季節忘れてならないのが、高知と防府の間には四国山地が聳えているということ。高知って聞くとすぐに「南国高知」っていう単語が浮かぶ人が多いと思うのだけど、温暖なのはあくまでも平野部だけで、山地の方はけっこう雪が降る。勿論、北国の人から言わせれば「そんなもの雪が降ったうちに入らねえ」なんて言われるのだろうけど、まあ高知人の常識の範囲でものを言えば、この時期っていうのはとにかく雪が降る。雪が降るとどうなるかっていうと、高速道路が通行止めになる。通行止めになると海岸線沿いに向かうしか無いわけだが、これがとんでもなく遠い。徳島回りで瀬戸大橋を渡ろうとすると、瀬戸大橋に辿り着くだけで絶対に防府までの最短時間以上はかかる。だから、危険性の高くなる2月半ば近くになっての出動は回避したいとの思惑も絡んで、結局2月1~2日という日程に落ち着いた。宿はドタキャンしてもキャンセル料の発生しないホテルを選んで、ホテル側にも「雪が降ったらドタキャンになるかもしれません」って正直に話した上で、快諾してもらってから予約した。しかし、シングルルームに1泊して3900円(土日割引)って、いくら素泊まりだからって安過ぎない?出動するのは、N川さん・ひっちさんとぼくの3名。果たしてぼくらは、無事防府に辿りつけるのか。

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